緋の花79
抱きしめられているところが熱い。
まるで邦一の体温を自分が奪っているかのようだと秋星は思った。
「思おうとしてたというか……」
「何が……?」
何が、と聞いた自分が頭の悪い存在に思えた。
それくらい言葉の流れやニュアンスでなんとなく把握出来るだろうと秋星は自分で自分を呆れる。
ただ、ちゃんと邦一の口から聞きたいのだ。邦一の言葉で聞きたいのだ。
「そういう目で俺はお前を見てないって確かに言った……けど……ただ……」
秋星を抱き寄せたまま、邦一は少しずつ絞り出すように言葉にしてくる。
「いや、でも実際……そう思ってた。だって秋星は男ってだけじゃなくて……俺の主人だろ。仕える相手にそんな筈がない……」
元々あまり口が達者でない邦一は、むしろ簡単に表現することが出来ないようだ。少しずつ少しずつ、自分の考えを雫のように垂らしてくる。
「なのに秋星に何かされる度、お前を変な目で見てる気はしてた……、……」
変な目で、と言うと邦一は少し言葉に詰まってきた。仕方なく促す。
「変なって、どんな目なん」
「……秋星が……やらしくて……」
やらしいと言われて秋星は腹立たしく思うどころか、むしろ体の奥が少し疼いた。
「おかしいよな。お前にもこの間そんなこと、言ったけど……よく考えなくとも主人相手に思うことじゃない」
「そうなん? せやったら自分の侍従に性的な目を向けてる俺はどうなんねん」
「それは……まぁ、秋星は秋星だし……」
「はぁ? 何やのそれ。……そんでお前は、俺がやらしく見えてるだけなん?」
「……違う。だいたい興奮するのも、お前の力のせいだけじゃなかったと、思う。お前の姉さんに冗談でせまられても……お前に対してなるみたいにならなかった」
なぁ、それって……それって……。
「……そーゆーこと、今気づいたん?」
「……いや、今じゃない。多分前から自分のどこかで思っていて、でもあえて見ないよう、考えないようにしてる、っていうか意識してなかった、というか……」
秋星は邦一の包容を解いた。そしてじっと邦一を見上げる。
「でもお前の中に入って……その上で秋星が俺のこと好きなんだって知って……それで妙に意識させられて……自分のことなのにそれについていけなくて、秋星にはっきりそういう目で見てないって言うことで……何て言うんだろう、自分を保とうとしたような気がする……俺、自分でもよく分かってないんだけども」
邦一が困惑したような表情を見せてきた。
気持ちが分からないと言えども、邦一が拙くとも口にしてくれることで邦一の考えは伝わる。
以前からやはり邦一の中で何もなかった訳ではないのだ。秋星の気持ちがとてつもなく向上してくるのが分かった。
ただ秋星が男で主人だということで邦一はそれこそ「ありえない」と閉め出していたのだろう。
だが性交することで改めて秋星に対して何らかの思うことがあった邦一はそれに対応しきれなく、更に閉め出す方法に出たというところだろうか。
秋星には全く分からない理論だし分からない感情だ。ただ、自分勝手な性格ではあるが、これでも人それぞれの感じ方や捉え方があること位は把握している。とはいえ「そうか」で終わらせるつもりはない。
「男やったらあかんの?」
「あかん、というか……俺がそういう目線になれない筈、だった……」
「筈だった? それにな、主人やったらあかんの?」
「だって仕えてる相手に……」
ため息を吐くと、秋星は邦一から離れて必要なものを取りに立ち上がる。一体どうしたのかといった顔をしている邦一を、戻って来た途端に今度は自分が押し倒した。
「やるで」
「……、はっ?」
「だってやで、俺に突っ込んで、奥に押し込んでたもん意識したよぉなもんやろ? そんだらもっとするまでや。そんで底までひり出しぃ」
「っちょ……だいたい言い方……!」
秋星についていけないといった様子の邦一だったが、秋星が着物を乱し、また自分で後ろを濡らして慣らそうとしているのに気づくと真顔になった。そして少し赤い顔をしながら言いづらそうに口を開いてきた。
「……待て、秋星。わざわざそんなことしなくても……俺は……まだ言わなきゃいけないことあるんだ……とりあえず話を……」
「待たへんわ今更。だいたいさっきはお前からしてきた癖に」
血を飲ませる為やけどな。
「いや……。……はぁ。あの、な。その、どうしてもするって言うなら……せめて俺にそれ、させてくれないだろうか……それとも経験のない俺にはされたく、ないか?」
「……、……は?」
慣らす指の動きが止まった。
こいつ、何言ってんのかほんま自分で把握してんねやろか……。
そもそも秋星とのことを考えられず閉め出した癖に、先ほどといい本当に何故そういうことが出来るのか。結局またここに戻る。
「お前な、俺をそーゆー目で見ぃへんよぉにしてたんやったらな、普通こーゆーこと出来へんのちゃうの」
「否応なしに俺に色々してきたお前が言うなよ……」
そう返されると秋星としても更に言い返しにくい。ただ、それでも普通の人間は同性相手に性的なことをしようとしないのではと思う。
体を起こすと手にローションを垂らし「……入れるから」と邦一が本当に指を秋星の中へ挿入させてきた。先に自分でしていたのもあって痛みはないし違和感も少ない。
いや、違和感どころか──
「っふ……」
「気持ち悪く、ないか……?」
「……ん、逆にちょっとな、……は……っ、ん、気持ちえぇかもしれん」
「……秋星らしい」
お前にされてるからや。その辺、分かってんのやろか、ほんま……。
性的なことが好きなのではない。邦一だから好きなのだし、血が欲しいだけでなく触れられたら気持ちがいい。
「クニは……気持ち悪ないのん」
「何で」
「男で主人で魔物の尻穴に指突っ込んでんやで」
「他に言い様はないのか……。……うん、気持ち悪く、ないな。むしろ……」
押し倒していた体制からお互い向き合うように邦一は座り、秋星は膝立ちをしていた。気持ちが良くて力が少し抜けるせいでその体制を保つのがほんのり辛くなってきていた。その為邦一へ体を預けようとしていた秋星は邦一の表情を目の当たりにした。
むしろ、と言いかけた邦一は少し顔を赤らめ何かを堪えるような表情をしていた。
お互い言いたい事感じる事にもどかしい状態
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