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スキンシップ17

最近なんとなく麻輝に対して妙だとは思っていた。
不意に顔が近いと目を逸らしてしまうこともそうだ。
そわそわとして落ち着かなくなる。

不思議だなと黒兎は思ったので麻輝に聞いたら逆に聞き返され、挙句狡いと言われた。全くもって意味が分からない。
そう思っているとキスまでされた。
更に意味が、と思いつつも黒兎の中で引っかかりのような、だが閃きそうななにかがあった。

思わず目を少し見開いていると「キス……されても嫌じゃない……?」と麻輝に聞かれる。
今なにか閃きそうだった状態で新たに質問され、黒兎は戸惑う。
別に自分のことを頭が悪いと思ったことはない。天才とは言わないが普通もしくは中の上くらいの成績ではある。
だが最近は分からないことが多い。その上質問を重ねられると余計分からなくなる。

更に、何故怪訝そうな顔をしているのかとも聞かれ、ひとまず目先のことから片付けるつもりで麻輝が言っているのはとりあえずキスのことだろうと判断し「……今は驚いたんだ」と答えた。
だいたい麻輝はこちらが答える前から質問を重ねすぎる。余計に混乱する為やめて欲しいと思うので今度抗議しようと脳内でメモをした。今言えばいいのかもだが、黒兎の処理能力がまず追い付かない。

「え? ああ、うん、そ、うだね。俺でもクロが驚いたんだろうなって分かる顔してた。でも怪訝そうな顔もしたよね」

また聞く。

だがそうか、と納得した。先ほど聞かれた、キスをされても嫌じゃないかどうかについて答えてなかったと気づく。

「なにか分かったの?」

そしてまた聞いてくる。麻輝は質問フェチなのかとそろそろ思いそうだった。

「なにが」
「……怪訝そうだった理由、とか……」

怪訝そう?

「分からない」
「え? でも今、なんか分かったような顔しなかった?」
「ああ。驚いたけどお前にキスされたの、別に嫌じゃなかったなと思って」

実際別に嫌じゃなかった。
これは前に考えたこともある。麻輝にならキスくらい平気な気がする、と。まさか本当にする羽目になるとは思っていなかったが予想は当たったということか。
ただ、先ほどなにか閃きそうだったことが黒兎にとって気になった。
もう一度確かめたくなる。

「なあ、もう一度してみて。確かめたい」

黒兎が言うと、麻輝は困った顔も迷惑そうな顔もせずにしてくれた。
先ほどよりも唇が合わさっている気がする。
キス自体初めてのことだったが、別にやり方を知らなくても出来るんだなとなんとなく思った。

とても気持ちがいい。

そして嬉しい感情が湧いてくる。

ああ、つまりはそういうことか。

黒兎はキスをしながら納得した。すると唇が離れていく。

「どうやって息するんだろうって思ってたけど、案外普通に出来るものだな」
「く、クロ、キス……初めて……?」
「ああ」

とても今、すっきりとした気分だった。最近妙だと思っており、なんとなくもやもやとしていたのが一気に晴れた感じだ。

「……なんか分かった気がする」

呟くと今度は黒兎から麻輝にキスをした。とはいえすぐに離れる。
麻輝は妙に顔が赤かった。

「さっきから顔、赤いな」

そう口にしてから気づく。
麻輝はそういえば「クロフェチ」だと言っていた。
ああ、だからキスをしてきたのかと、いきなりキスをされた理由も分かった。

「クロフェチってやつか。キスも対象なんだな」

どうせなら違う理由がいいとは思うが、今はとにかく自分のことが分かって機嫌が良かった。
嬉しいついでに自分のフェチを満たそうと黒兎は欲望に素直に行動する。麻輝の手に触れ「お前も触れていい」と楽しい気持ちで言う。
麻輝は珍しく黒兎の頬に触れてきた。その手がとても心地よかった。

その日は結局それくらいだった。麻輝にそれ以上触れてもらうこともなかったし、黒兎も分かったことを麻輝に伝えていない。
それもこれも麦彦のせいだ。麦彦が帰ってきたせいでうやむやになった。
この部屋は麦彦の部屋でもあるので仕方がないが、お詫びに手を触らせろとばかりにその夜は麦彦がテレビを観ている間さんざんいじり倒させてもらった。
テレビにばか笑いしていた麦彦がコマーシャルの間に微妙な顔で「お前にしても茶島にしてもほんと残念なイケメンだな」と心底残念そうに言ってきた。

「それを言うならムギだって残念だろ。可愛くて優しい女が好きなくせになんでよりによって少し他の女と仲良くしただけや、俺とマキがコンパってやつに行かないだけで地獄の業火に突き落とさんばかりに怒る女と付き合うんだ」
「待て、そこまで酷くねーぞ……っ? それになんだかんだで俺の彼女だって優しいとこもあんだって。顔は派手だけど美人だし」

微妙な顔を向けてきた麦彦が少しデレデレとしだして気持ちが悪い、と黒兎は少し離れる。

「今なんで距離とった?」
「……気持ち悪くて」
「はーっ、ほんっと黒うさっておとなしそうに見えて実際バッサバサ切ってくよな」
「? 切ってないぞ」
「もののたとえ! だいたい人にそんなこと言ってよぉ? お前はどんな女が好きなんだよ」

聞かれて黒兎は面倒くさいとばかりにため息を吐く。

「……ほんとお前いい性格してるわ。茶島もなんでお前みたいなの好きなんだろーな?」
「っマキが好きだと言ったのか?」

突然近づいてきた黒兎に、麦彦は少し引いたように黒兎を見た。

「……なに、今の珍しい反応。いや、別に好きとか言ってねーけどクロ厨とかあいつ言ってんだろ」
「あー……」

それか、とばかりに黒兎は興味を失った。麦彦が「ってめ、マジいい性格してるわ……」と再度言っていたがどうでもいいとばかりに風呂に入った。

翌朝はその代わり「楽しんでこい」と言っておいた。
ついでに気持ちを込めて「楽しんで泊まってこい」とも。

今日は麻輝が約束を破らない限り、麻輝の手を好きにしていい日だった。
十分に満喫させてもらうつもりは前からあった。だが昨日はっきり分かったことでその思いは更に強い。

そう、分かったこと。
キスでその気持ちに気づいた。

黒兎が麻輝の手を好きだというだけでなく、麻輝自身を好きなのだということだ。
いつから好きなのかは分からない。だが別にそんなことはどうでもいい。

今、好きだ。

それが分かっただけで十分だった。
残念ながら、前からいいやつだとは思っていた麻輝は黒兎をそういう意味で好きなのではなく、フェチの一環として好きらしい。
残念だが仕方がない。
だが諦めようとは思っていない。
フェチで黒兎に触れたいと少しでも思うなら、それを利用してそれこそ必要以上に触れてもらおうと思っている。

「……体の関係に持ち込めばこっちのもんだろ」

なんなら自分が麻輝を受け入れる側でもいい。いや、むしろそちらのほうが都合がいいだろう。
麻輝が女を好きなのは百も承知だ。本気で嫌がったら止めるが、フェチであろうが自分に好意を少しでも抱いてくれているなら、付け入る。

「抱いたなら付き合え、でいいかな」

恋するだけで詩を詠んだり自殺でもしそうな、そのくせうだうだとして告白すら出来ない主人公がよく書かれている文学の話は楽しく読むが、黒兎にはそういう気質はない。
好きな相手が女じゃなくても好きだというなら自分は気にしない。
麦彦が昨夜言っていた「いい性格してるわ」という言葉を思い出す。

いい性格?
当たり前だ。こちとら何年も特殊性癖と素直に向き合ってきてんだ。










黒兎の外見と中身はあまり一致しない。
とはいえとんでもないことを考えていそうでもただ独特な発想であるだけのことが多い。









2017/06/19

 

 

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